「勢揃坂 蕎麦 ぎん清」(東京・神宮前)
今朝の雨は、まさに天からの恵だった!
冷たいシャワーミストの中のランニングは、毎朝公園で暑さに喘いでいる身には慈悲の雨。
あゝ、カエルの気持ちがよくわかる…
暑い夏の日に、私を生き返らせてくれるもうひとつの場所がここ。
神宮前2丁目、熊野神社の脇道にひっそりとある「勢揃坂 蕎麦 ぎん清」。
うっかりすると完全に見落す入口。
お店の前の「旧鎌倉街道」のゆるやかな勾配の坂が、店名の由来であり、平安末期、源義家が奥州へ出陣する際に軍勢を揃えた「勢揃坂」だそうです。
こんな身近に、かつて義家が居たなんて…!
心がふっと和む、ぎん清入口の小さな坪庭。
サザエの貝殻には、小さな紅葉の苗。
どの鉢も苔が元気。小さいけれど丹精込めた盆栽の数々に、店主の人柄がにじむ。素敵!
カウンター4席とテーブル席3つのこじんまりしたお店。
蕎麦湯用のカラフルな鉄瓶も、木彫りの猫も、隅々に様子のいい調度が選ばれている。
季節で変わる「旬の蕎麦」を楽しみに出掛けてくる。
これは「冷やし梅干しの天ぷら蕎麦」(1200円)
おそらく南高梅だろう、酸味がなく果実のような甘みの梅干し。
天ぷらの衣は薄付きで、サクッと絶妙。
さらに長ネギの天ぷら、紫蘇、胡瓜のゴールデンコンビが加勢する、冷たいぶっかけ蕎麦だ。
「梅干しの天ぷら?」なんて思っていた過去の私を、往復ビンタしてやりたいくらい美味しい。
蕎麦も毎日、お店で手打ちするという。自家石臼挽きのそば粉を使った二八蕎麦も、好みなのだ。
梅干しの天ぷら…ぎん清がなかったら、きっと一生美味しいものと知らずにいたに違いない。
「天ぷら、脂っこいのが苦手で外で頼むこともないんだけど…
ここの天ぷらは食べられるんだよ」
と女将さんに声を掛ける常連さんも。
お蕎麦ももちろんだけど、天ぷらも秀逸。
こちらは「冷やかけトマト蕎麦」(1300円)
清流を思わせるキンキンに冷えたお出汁に、トマトの甘みと茗荷と紫蘇の薬味が冴えわたる。
夏の暑さを忘れる一椀。
多分、このトマトもただのトマトではない。
甘さや味の濃さは普通じゃないのだ。スーパーフルーツトマトじゃないかな?
あまりの美味しさに、熱い感動を女将さんにつたえたところ、
「トマトの違いに気づいていただけると嬉しいです。原価度外視でやっているんですよ。トマトの旬もとても短いので、かなり短い期間しか出せないメニューなんです」と仰っていた。
8月中には終わってしまうそう。短い期間だけの名作だ。
「海老のかき揚げ」900円も思わず追加。
「冷やがけすだち蕎麦」(1400円)
目にも涼しい、清涼感いっぱいの夏の一品。
皆さん、すだちは食べないのだろうか?私は皮ごと全て完食。
出汁に程よくすだちの香りと酸味が移り、冷たさに身体中が癒されます。
「冷やし稲荷寿司」150円
けっこう大きい! そして、今まで食べたどんな稲荷寿司より美味しかった…
淡い和三盆のような丹精な甘さと、ごま、柚子、生姜の風味が絶妙。いくつでも食べられそう。
いつもあるわけではない「鯖の押し寿司」200円。
もうね、これも絶妙…あれば頼んでみてください。
デザートの余裕のある方はぜひ「饅頭の天ぷら」(400円)も。
福島の郷土料理とのことで、お隣の容器のお醤油をかけても美味しいのです。
こちらもカラリ、サクッ!新境地でした。
こんな蕎麦店がご近所にある幸せに感謝しつつ、足繁く通う日々。
本当は誰にも教えたくない、でも好きな人を連れて行きたい、
「ぎん清」はそんなお店なのです。
「勢揃坂 蕎麦 ぎん清」
東京都渋谷区神宮前2-3-10
ヒルトップ神宮前1F
営業時間:11時45分~14時00分(現在、お昼の営業のみ)
水、土、日曜、祝日定休