別邸仙寿庵(施設編)
別邸仙寿庵(食事編)から続きます。
すばらしい滞在となった別邸仙寿庵も2日目。
施設や食事はもちろん、
スタッフの方々の誇りを持って働く様子、
各人が最良のもてなしを…と接してくださる姿に胸打たれる。ああ、泊まれて良かった。
谷川岳にはもう登れたし、
せっかく素敵な宿にも泊まれたんだから、
露天風呂につかってのんびりしてもよかったが…
午後からの雨の予報に、今のうちと周辺散策にでかけた。
つくづく、じっとしていられない貧乏性。
清々しい朝の空気のむこうに見えるのは、爼嵓(マナイタグラ・いちばん奥に見える山)。
じつは爼嵓こそが、元谷川岳。
明治時代、国土地理院の誤記によって、
おとなりのトマの耳&オキの耳が、
谷川岳と呼ばれることになったそうだ。
刻々とうつりゆく景色にしばし見惚れる。
そういえば、みなかみ町ではときどき、
子連れのツキノワグマが目撃されていると聞き、クマ好きの私としては、
淡い期待を抱きつつキョロキョロしつつ歩く。
こぐま見たい〜!
うまいこと沢ぞいを歩いててくれないかな。
できたら、こちらは橋の上からとかで…
と、大変都合のいいことを考えながら。
お互いバッタリは避けたいところ(^-^;)
さらに山の小道を歩く。
緑がきれい、この鳥の声なんだろー
なんて話しつつ歩くも、
誰にも会わない。ひとっ子一人いない。
やっぱり、冬のスキーシーズンが賑わうの…?
そんなことを思いながら歩いていたら、
「いってぇ!」
と夫の叫び声。
見ると、ブンブンと大きな音を立てて、夫の足の周りを虫が何匹も飛び回っている。
近くにいる私にはまったくお構いなしで、なぜか100%夫ばかりをねらい追い回す。
なんか美味しそうな匂いでもするのかい?
ついに耐えかねた夫は、走力で振り切るつもりか、羽虫たちをひき連れ、あっという間に坂の向こうに消えていった。
あとで調べるとウシアブというらしい。
人間の足に噛みついて、
肉を噛みちぎって血を吸う…コヮ(°д°lll)
さて、夫もどこかから戻ってきたので、
そろそろ宿に帰ることにする。
地図を見ると、宿へショートカットできる小さな橋が、すぐそこに架かっている。
この橋をつかわずに迂回すると、さらに3kmほど歩かねばならない。あまり使われていないようだが、疲れている私たちは、まあ行けるだろうと橋を渡ることにした。
沢沿いの草ぼうぼうの道ともいえぬ道を、
藪を漕ぎ漕ぎしばらく進むと橋に出た。
「近道助かったね。疲れた〜」と、仙寿庵の図書室で休むために靴をぬぐ私に、声をかける夫。
「君の靴から、シャクトリムシがたくさん出てきたよ。
まぁ、虫といっても赤ちゃんなんだから優しくしてやんなさいよ」
たしかに私は、ゴキブリを発見すると、咄嗟に手近なものでひっぱたいて殺生してしまうことがある。
夫は、まず私をなだめ無益な殺生を防ごうと先んじたようだ。
目線を自分の靴に落としてみると…
ん….?
たしかに私の靴から、ピョコピョコ出でてきた細長い虫たち。
シャクトリムシ…?
でも、動きがなんだか…違うんじゃない?
その瞬間、声にならない恐怖が、
私の背中をゾゾゾーッと駆けあがる。
ギ×$ャ☆♭#▲※ー!!
ヤマビルじゃん!!
赤ちゃんなんかじゃない!
れっきとした大人だし!
(ヤマビルが何か知りたい方は、自己責任で画像検索をお願い致します。
私にはとても本物の画像を載せる勇気はありません…)
私は瞬時にズボンをたくしあげ、靴下をめくり、窓から靴をふりまわし、
計5匹のヤマビルを投げ捨てたのだった。
(夫の方にはなぜ1匹だけ…?)
ふぅぅぅぅ…
幸いどこも吸血されてはいないようで、深いため息と共に、安堵感が広がる。
しかし脳はフル回転。「一体どうやって?」
間違いない、あの藪を漕いだ時だ。
5分もなかったのに!
二酸化炭素と熱に反応するというヤマビルは、草葉の陰にひそみ、結構なスピードで歩いていく私たちに気づき、反応し、飛び移ってきたのだ。
すごい判断力とスピードじゃないか。
急に、恐怖と嫌悪に支配されていた私の心に、ヤマビルへの興味と感心とが芽生えた。
『スター・ウォーズ エピソード6/ ジェダイの帰還』の、熊のぬいぐるみのような小さなイウォーク族が、森に隠れながら、帝国軍の巨大な戦闘ロボットにロープや木の棒などを使って、果敢に戦いを挑むシーンが、頭に浮かぶ。
ヤムヤム…(「人間じゃ!みんな行くで」)
ヤムヤム…(「ええか!飛び移るで」)
アイ〜ヤ〜(「あかん、きばりや〜」)
ヤマビル視点だとこんな感じ?
もしくは、進撃の巨人かな?
しかも、ヤマビルは一度血を吸うと、
1年絶食しても平気だという。
なんという省エネ生物…
そういえば、あの藪だって次はいつ、
食べ物が通るかわからないんだもの。
ヤマビル、生活がかかってるよね…
寿命も2-3年しかない彼らにとって、
1度に2頭の霊長類にありつける千載一遇のチャンスだったのかも。
そんなこと考えてたら、
ちょっとくらい血あげてもよかったか…
そんなやさしい気持ちになったりもしたが、
帰ってよく見たら、
噛まれていた…(´༎ຶД༎ຶ)っ
すごく痒いし、なかなか治らない…
前言撤回。やはりヤマビルはいやである。
あ、別邸仙寿庵にはクマもヤマビルもいませんので、安心してください。