イワシ開眼記念日

新宿

「新宿割烹中嶋」(東京・新宿区)

駐在員の妻として海外生活が大〜変長い
いとこのきょうこちゃんが、
昨年末に一時帰国した。

彼女は、アフリカ圏や中東などの日本食材が手に入りにくい赴任先でも、
大豆から味噌や納豆を作ってしまったり、
現地の市場の見知らぬ魚で、上手に西京焼きを作って
ご主人の部下をもてなしてしまえるような、百戦錬磨の料理人でもある。
そんな彼女が「ぜひ今度、行ってみて」と紹介してくれたお店。
行きたい行きたいと思いつつ月日は過ぎ…ついに実現。

新宿四丁目の交差点から一本入った裏通り。
知らなければ絶対にたどり着けないビルの地下に「新宿割烹中嶋」はあった。
11時に到着するも人影なし。
しかし11時30分オープンの10分前に戻ると、もう10人ほど並んでた。ギョ!

ピシッと居並ぶ板さんたちと、品のいい女将さんの「いらっしゃいませ」の声に出迎えられ、
高級割烹の名店を感じさせる、様子のいいカウンター席の脇を抜けて、奥のテーブル席へ。

されど、ランチタイムはとてもリーズナブル。
「柳川鍋定食+お刺身ハーフ」(1375円)と「フライ定食+お刺身ハーフ」(1265円)を注文。
ものすごく迷ったので、
このハーフ追加システムは大変ありがたい。

周囲のお客さんの注文を聞いていると、
ひとりで刺身、フライ、柳川という強者もいた。
1品660円で単品注文できるというのもいいな。

ふと壁を見ると『貞治さんの料理』と題して、
作家の宮本輝さんの直筆原稿が飾られていた。

どうやら、この貞治さんは現在の店主で「新宿割烹中嶋」2代目。
そして、祖父に当たる中嶋貞治郎という人は、
北大路魯山人の主催する「星岡茶寮」の初代料理長だったそうだ。

しばらくしてテーブルに運ばれて来たお皿を見て、ちょっと驚く。
さりげないが、よく選ばれた、良質な器ばかり。
割烹中嶋は器と素材のとり合わせなど、
盛り付ける器選びにまでこだわりがあるお店のようだ。
夏は器の余白を多めに、冬は少なめ…など器の余白にまで気を配るらしい。
繊細で細やかな日本料理の美意識にはっとさせられる。
さすがは「器は料理の着物」と言っていたという北大路魯山人ゆかりのお店。

そうこうしていたら、柳川定食が到着。
アツアツ、グツグツを頂きます!

これまで食べたどんな鰯料理よりも美味しく、驚いてしまう!
鰯のもちもちとした肉厚の弾力は、はじめての体験だった。
魚くささはみじんも、感じられない。
柳川の出汁も、淡くさりげない甘さ。非常に上品。
じつはどじょうの柳川鍋はなんとなく敬遠することが多かったのだが、
イメージが覆された。
お米やお味噌汁、お漬物も美味しい!

こちらのフライも肉厚で、脂の乗った鰯で作るとかくも美味しいのか!と感じ入る。
塩胡椒だけの味付けで十分、鰯の甘味、旨味が引き出されるのだと知る。
キャベツの甘酢和え、もやしのカレー風味の付け合わせなど、斬新…でも飽きのこない工夫だ。

ハーフで追加した、鰯のお刺身。
レモンを絞って、生姜と生ワカメとともにいただく。
こちらも臭みは一切なく、魚の脂の甘みまでが感じられて、本当に美味しい鰯だった。
次回は、お刺身定食を頼みたいと思うほど!

今日は私の鰯開眼記念日となった。
鰯を軽んじていた自分を反省…
新鮮な鰯は、丁寧な下拵えと、隅々にまで心の行き届いた料理人の技があれば、こんなごちそうになるのだった。
素晴らしい料理に加えて、女将さんのさりげなく、それでいて温かな気遣いも素敵でした。

素敵なお店を紹介してくれた、きょうこちゃんに感謝!
また、近いうちに再訪したいと思います。

新宿割烹中嶋
〒160-0022  東京都新宿区新宿3-32-5 日原ビルB1
電話 03(3356)4534
営業時間:昼の部 11:30〜14:00
夜の部 17:30〜20:00(短縮営業中)