ビーフンあずまと新橋駅前懐かし昭和ビルヂング

新橋・虎ノ門

「ビーフン東(あずま)」(東京・新橋)

学生時代のバイト先で、
部長が部署全員を焼肉食べ放題に連れて行ってくれたことがある。

喜び勇んでほくほくと肉をほおばっていると、ふと冷たい視線を感じた。
視線の主は、隣に座るモデル体型のバイト仲間とベジタリアンの男性係長だ。
「肉食べてる…さいて〜」
「えっ?」と思いつつも、二人の言葉がブスッと突き刺さり、私は思わず芸人ヒロシ口調でつぶやいた。

「一体何を食べればよいと言うのですか…?」

みると、二人の前のテーブルの上には、海藻サラダと山盛りのビーフン。

え、ここ焼肉屋なのに肉食べないの?
でも、そう言われればビーフンはヘルシーな印象がする。
もしかして、ビーフンをたしなむ女性って素敵なのかしらん?
以来、私にとってビーフンは無視できない存在なのだ。

かと思うと、ビーフンに全く興味のない人もいる。夫だ。
理由を聞くと「あれは食べても素通りするだけ。身にならない」からだそうだ。

しぶる夫を説得し、それぞれのビーフンへの思いを胸に、新橋にある昭和27年創業の老舗台湾料理店「ビーフンあずま」へ。
かつて外回りの営業をしていたときに見つけ、気になっていたお店である。

不穏な雲たなびく、新橋駅前ビル一号館。
いざ!「ビーフン東」へ。

昭和感満載の廊下を歩いて行くと…

ずずーん

雰囲気たっぷり。異国感漂う店構え。開店まもない「ビーフン東」に到着です。
人気行列店なのだそうですが時節柄、サラッと入ることができました。

カウンター席には、お勤めらしき皆様がランチタイムのお食事中。

ランチタイムは、潔く3種類のビーフンとバーツアン(ちまき)のみ。
ビーフンは「焼き」か「スープ」、それとサイズが3種類から選べます。悩むなあ。

と、視界の端に今まさに提供されんとするちまきが…

でっか….

遠目にもかなりのサイズに、おののく。
よし、ちまきは1個を二人で分けることにしよう。

まずは「五目ビーフン(焼ビーフン)」(一人前・850円)がやって来た。
白くまばゆいビーフン、味薄いのかな…と想像したが、思いのほか旨味塩味がちょうど良い。
これはヘルシーだ!

思っていたよりサイズは小さい。
男性なら大盛りにしてもいいと思う。

こちらは「蟹玉(焼ビーフン)」(一人前・850円)。
半熟オムライスのようなとろたま卵をまとったビーフンもまたいい。
五目と蟹玉はベストチョイスと勝手に満足する。

「味が薄い場合にはどうぞ」と薦められたにんにく醤油。
夫はだくだく、私は少しだけかけて頂く。
味変にはいいかもしれない。

ほぼすべてのテーブルでオーダーされている「バーツアン(ちまき)」(700円)。
あらかじめシェアすることを伝えると、半分に切って持って来てくれる。
見た目通りのもちもち&滋味深いちまきで、女性ひとりでも1個食べきれそうだ。

それにしても、ウズラの卵のキレっぷりが見事すぎる。
これ、どちらかに片寄っていたらと思うと落ち着かない。
もし、上司と部下でシェアしていた場合、部下はそっと卵のないほうを頂くのだろうか。
はたまた、付き合いはじめのカップルだったら、男性が女性にどうぞこちらをと卵側を譲るのだろう。
そんな心配をしつつ見回すと、他のテーブルのちまきも、一様にど真ん中で真っ二つだ。
あっぱれ。人間関係をギクシャクさせることのない熟練の技がここに。

ちまきを巻く職人が、常に卵の向きや角度を考慮してど真ん中に配置してるんだろうか。
切り分ける職人の熟練度も半端ないに違いない。
もはやこれは、半分にきった卵を後から埋めこんでいるとさえ思える、としばし夫と議論。
この謎については、次回お店のひとに尋ねてみよう。

美味しいスープもついて来ます。

開け放った窓からはいる心地よい風に吹かれ、
不思議な壁画に見つめられながらビーフンをほおばっていると、ここが新橋なのを忘れる。

そして、箸を置いた夫が一言
「次回はちまきは丸ごとだな。あとは五目の普通盛りと蟹玉の小盛り」
再訪する気まんまんだな!
すわ!今まさに、夫のなかでビーフン革命が起こっているではないか。 
本人は気付いてないが…

行列するほどの気合はないが、また近くに寄ったらササッとヘルシービーフンはいいかもしれない。
今度はちまきも、一山挑戦しようっと。

ビーフン東
住所:東京都港区新橋 2-20-15 新橋駅前ビル1号館 2F
TEL: 03-3571-6078
営業時間:11:30~13:45(L.O.)  17:00~20:30(L.O.) 
土曜:11:30~13:15(L.O)
定休日:日曜日・祝日
※緊急事態宣言中はご確認ください。

同じ新橋駅前ビル一号館の1階の「ポンヌフ」も健在。
(いつも入口に椅子を出して玉ねぎを剥いていたおじいさんはいなかった…)
また、ハンバーグと真っ赤っかなナポリタンを食べに来よう。

「小川軒」もテイクアウトのお客さんで賑わっている。
ショーウインドゥの金のロゴ、看板の品のいい書体が好き。
変わらない風景にホッとする。

新橋駅前ビル一号館を後にして、せっかく来たのだからとついでに新橋駅前ビル二号館へ。

神の技…受けてみたい。

2階はマッサージ店のオンパレード。
店の前では椅子に座った客待ちの女性たちが、手持ち無沙汰な様子でスマホの画面をみていた。
少しあやしい雰囲気にドキドキする。
さすがにシャッターが閉まっている店も多い。

こちらは「昭和ブックカフェ」。
え!食べ物は持ち込み自由なの!? でも希望すればナポリタンとか餃子は食べられるのか。
フリーWi-Fi、充電可能、フリードリンク…至れり尽くせり。
外回りの営業時代に発見していたら、入り浸りっていたかも…。

百恵ちゃん、りえちゃんがいる。
『うる星やつら』や『ガラスの仮面』も擦り切れるほど読んだな〜
懐かしい少女時代の漫画、アイドルたちに目は釘付け。
(アグネス・ラムとうる星やつらのラムちゃんのダブルラムちゃん縦並びも見逃すな!)

ヤバい。
おじさまじゃないのに、とっても居心地がいい…!

「東京囲碁会館」
一人で囲碁をする年配の女性やおじさまたちが、真剣な面持ちで囲碁盤に向かっていた。

ほかにもインベーダーゲーム機のあるゲームセンター、喫煙OKのレトロ喫茶、立ち飲み居酒屋など、
まるで昭和のまま、時間が止まったような新橋駅前ビル1号館&2号館。
おじさまたちの聖域は、主婦にとっても興味津々の場所だった。

ああ、桃源郷よ。いつまでも。
(※新橋駅前の昭和ビル群は2022年には再開発の予定とのこと。嗚呼、誰か嘘だといって…)

ニュー新橋ビル
〒105-0004 東京都港区新橋2丁目16−1