鰻屋さんの鯛茶漬け

丸の内・銀座

「竹葉亭本店(東京・銀座)」

平松洋子著のエッセイ『焼き餃子と名画座』の中で、ある友人のエピソードが出てくる。
「銀座で美味しいものを一人で食べるならどこが良い?」と突然尋ねられ困った、というのだ。
さらに「めったに銀座には来ないから、銀座らしいところが良い」と質問のハードルが上がっていく。

とっさにその友人が答えたのが、『竹葉亭』の鯛茶漬け。
それを聞いた平松洋子は、膝を打って
「銀座らしさ、ほかでは味わえない美味しさで値段もほどほど。気おくれさせず、しかし非日常感もちゃんとある。ぴたりとツボを押さえた名セレクトじゃないか!」と太鼓判を打つのだ。

善は急げだ!さっそく私も食べに行こう。

というわけでやってきた「竹葉亭本店」。
銀座の喧騒から少し離れた、東銀座と東新橋のちょうど中間辺り。
新橋演舞場や歌舞伎座も徒歩圏。この界隈には、まだ呉服屋さんなど和装のお店も残る。

看板の文字が、右から左…ヽ(゚Д゚ )
気軽に入れる雰囲気ではないゾ!
なんて表で二の足を踏んでいたら、表に出てきた和服姿のおかみさんに、
「どうぞいらっしゃいませ」と丁寧に招き入れられる。

平日とあって、近隣のビジネスマン&ウーマンらしきみなさまがお食事中。
さっそく、お目当ての「名物鯛茶漬け」(2200円)を注文する。

ご飯はお櫃に盛られ、温かいまま思う存分いただけます。
二人で3〜4回頂ける量がたっぷり入っていました。

香ばしい胡麻を、マイ擂粉木でごりごり…

鯛は、胡麻だれと醤油の濃いめの味付け。
鯛だけ食べても美味しい。
帰ったら真似して作ろう!
白いご飯にそのままのせて、半分はお茶漬けに。

鉄瓶の中は出汁ではなく、焙じ茶。
お茶と胡麻だれはかなりの好相性だと知る。
あっさりと軽く、それでいてコクのある味わいに。

なんとも上品で、これは「淑女の鯛茶」と名付けたいと思う!

季節のデザートも付きますよ!

この日は和栗と美しい小豆、薩摩芋の秋満載のお菓子でした。
花卉のしつらえも素敵。

でも、竹葉亭は老舗の鰻料理店。やっぱりうなぎも食べたくなり、別の日に再訪。
こちらは「鰻お丼B」(3520円)

竹葉亭の鰻はふわりとやわらか、たれも甘み控えめで上品。
ボリュームのあるガッツリ鰻派には向きませんが、私はこの竹葉亭の鰻に開眼した!
北大路魯山人をはじめとする、文人墨客に愛された…文化系鰻とでも言いましょうか。
この上品で大人な感じ…「紳士の鰻」と呼びたい。

こちらが「鰻お丼A」(2970円)
AとBは鰻の大きさ、器が陶器か塗りか、の違いのようですが私はAで十分満足。
次回いただくならこちらに。
鰻高騰の今日日、価格も良心的だと思う。

着物で訪れたらもっと素敵な、昔風情が残る「竹葉亭本店」。
こちらは日曜定休なので、日曜日に出かけるなら銀座4丁目交差点近くの「竹葉亭銀座店」の方へ。

「竹葉亭の二階から眺める銀座には、なかなか風情がある」とは先ほどの平松洋子さん談。
粋で大人な銀座の休日を過ごしに、次回はそちらに行ってみようか。

それにしても、久しぶりの鰻は大変美味しゅうございました!

竹葉亭本店
東京都中央区銀座8-14-7
03-3542-0789
営業時間:月~土 
昼の部 11:30~15:30(L.O.14:30) 
夜の部 16:30~21:30(L.O.20:00)
定休日:日曜、祝日