東京最古のお寿司をテイクアウト

神田・神保町

「笹巻けぬきすし総本店」(東京・神田小川町)

何度その前を通ったか…!
ついぞその存在に気が付かなかったこのお店。

神田小川町にひっそり佇む、東京最古というお寿司屋さん「笹巻けぬきすし総本店」。
創業元禄15年(1702年)。寿司の文化が花開いた江戸時代から300年以上続き、”江戸三鮨”のなかで唯一現存するお店。誕生は、赤穂浪士の討ち入りの年だとか。
好奇心に誘われ、江戸名物のお寿司をテイクアウトです。

店の前のショーケースの中に『江戸名物 笹巻毛抜鮨由来』の文字。
冷蔵庫のない時代、防腐効果のある笹に包み、魚の小骨をていねいに毛抜きで抜いてつくる様子から、接待品あるいは贈答品として利用する大名や旗本諸侯が「けぬきすし」と呼びはじめたと書かれていた。
調理するのに非常に手間と時間がかかる、相当な高級品だった様子。

おそるおそる店内に入ると、ショーケースにはモダンな包装紙に包まれた折り詰めが。

5個から100個まで選べます。

12個入り(海苔巻き2個の代わりに白身を3つ入れてもらった)で、しめて3,094円也。
取り合わせなども相談に乗ってもらえるのがありがたい。

注文を受けてから握ってくれるので、しばし待つ。
常連さんは、電話注文をしてから取りに来ることが多いのだとか。
店内にはテーブル席がいくつか用意されていて、お昼にはサービスランチも用意されている。

いそいそ帰宅。いざ開封いたしましょう。 

モダンな包装紙の中は一転、縁起物の「あたり矢」が描かれた古風な包みが現れた。佇まいがいい。

みずみずしい緑の笹が美しい、笹巻けぬきすし。
作りたてよりも、夏場は3〜4時間、冬場は6時間ぐらいたったころのほうが塩や酢がこなれ、笹の香りも馴染んで食べごろになるのだそう。

笹の中はこんな様子。上は「たまご」。
薄いパンケーキのようなフワっとした食感。しかし、甘みはほとんどなし。
驚くべきはシャリの酸味で、現代人が慣れている甘いすし酢ではなく、強めの米酢のイメージ。

こちらは「カンパチ」。醤油も不要。そのまま頂ける。
寿司だねはまず塩漬けで1日、次に酸味の強い酢(一番酢)で1日、そして酸味の弱い酢(二番酢)で3〜4日も漬けるそう。保存のためとはいえ、現代の握り寿司に慣れた舌には、かなり酸味がきつく感じる。
それでも時代に合わせ、かなりマイルドにしてきたのだそう。

こちらは光物の「コハダ」。
カンパチ同様、あまりに強く酢で締めてあるので、正直、魚の味の違いはわからない。

奥は「鯛」と「海老」

「おぼろ」と春の短期間だけ楽しめる旬の「白魚」。
この2つは、みりんや砂糖の甘い味付けで思わずホッとなる(^-^;)

冷蔵庫のない江戸時代、魚を長時間保存し楽しむことを可能にした、職人の技の結晶「けぬき寿司」。
味も見た目も、寿司の原点のように感じた。
また、このお寿司を通じて、江戸文化を実際に体感できた気がする。
300年前の人と同じものを食べているというだけでも、不思議な感動があるのだ。
隣の席で江戸の人たちが寿司をつまんでいるのじゃないかとさえ思う。
まるでタイムスリップしたような気持ち。
この珍しいお寿司を囲んで、江戸の人たちもきっと会話も弾ませたのだろうな。

私のような普通の人が、食べるだけでこんな気持ちになるのだから、
この伝統を守り続けた人たちの功績は本当に素晴らしい。
まさに食の文化遺産。生きた文化体験だった。

意外な驚きを楽しんだテイクアウト。
ごちそうさまでした。

笹巻けぬきすし総本店 (ささまきけぬきすしそうほんてん)
東京都千代田区神田小川町2-12 宇田川ビル 1F
03-3291-2570
営業時間 月~金曜 10:00~18:30
土曜日 10:00~17:00
定休日 日曜・祝日