「オテル・ドゥ・ミクニ」元シェフのラーメンと、乾物カフェ

千葉エリア

「菜(さい)」(千葉県・市川市)

夏もわずかに涼しさを取り戻した頃、夫の実家の草むしりに行った。
空き家となって久しい家の庭では、ちょっとした都会の公園よりも、豊かな生態系が育まれている。草をむしり、落ち葉を掻くたび、さまざまな生き物たちが、住まいを追われ、右へ左へ逃げ惑う。
(大丈夫!傷つけたりしないよ!
なぜって私も君たちのことがコワいのだから!)

「バッタだって、カナヘビだって、
ダンゴムシだって〜、みんなみんな、
生きているんだ友達なんだ〜♪」


空元気にそんな歌を口ずさみながら、無慈悲に雑草をひきむしる私は、庭の生き物たちにとっては、さぞや無法の巨人だったに違いない。
皆のもの、許してたもれ…

朝からの全力草むしりに、すっかりエネルギー切れになった我々は、昼食をとることに。
それにしても「乃ざき」無き今、何処へ行こう?
そうだ、久しぶりにあそこへ。

軽い投げやり感のある外観。看板の字もかすれちゃってる。しかし、味に妥協は微塵もなし。

本八幡の知る人ぞ知るラーメン店「菜」。
ニッケコルトンプラザ通りという大通りに面しているのに、店構えが控えめすぎて一度通り過ぎてしまった。

 現在大学生の長男が市川の高校に通学していた頃、「毎週食べにいくラーメン屋がある」と連れてきてくれて以来の、かれこれ5年ぶりの再訪。



常連とおぼしきメンズばかりのなかに、アウェイ感を感じつつ入店。
カウンター席のみの店内。
ワンオペでラーメンを提供するご主人は、
東京四谷のフレンチの名店「オテル・ドゥ・ミクニ」やシェラトンホテルで厳しい修行を積んだ、元フレンチのシェフ。
きっと職人気質で厳しい人に違いない…勝手な思い込みでひとり緊張していると、カウンター越しに常連さんとおだやかに話すご主人。
取り越し苦労だったよ。

注文は、らーめん(750円)と「つけめん」(950円)のどちらかを選び、しかるのち好みのスープを選ぶ。
ただし、このスープの種類がすごい。醤油、塩、濃口かつお、濃口にぼし、塩かつお、塩にぼし、白味噌、赤味噌、麦味噌の9種類。アイスのフレーバーばりに選べる。
ああ、瞬時に注文できる人が羨ましい…!
心を決めていなかった私は、あまりの自由さに打ちのめされる。ちょ…ちょっと待って!

迷って迷って、結局「醤油ラーメン」を注文することに。

スープは清くしっかり、旨味が優しい。
天然の素材だけを使い、化学調味料などの添加物は一切使わない、まさに誠実な味わい。

チャーシューも素晴らしかった。
フレンチの真空調理法の技術を活かしたこのレアチャーシュー。2001年の「菜」オープン当時は、真空調理法でチャーシューを作るラーメン店はなく、ラーメンコンテストのチャーシュー部門賞を「菜」が独占。業界を震わせたそうである。カッコいい。

チャーシューというより、なるほど、しっとりジューシーなローストビーフだった。
(公式インスタの塊肉が大変魅力的である↓)

麺は、ツルツルそしてコシも強い。
見よ!この透明感。スープの色が染みて見える。
カウンター越しに製麺機らしきものが見えて気になっていたけれど、やはり麺も自家製だそう。
気づけばあっという間に完食していた。

↑夫の注文「濃口かつおつけめん」も、最後まで飽きることなく、美味しく頂いたようです。


そうこうしているうちにも、ひとり客が次々訪れる。
最寄りの総武線本八幡駅から、歩いて約15分。
飲食店には厳しいロケーションだと思うけれど、この味をもとめて遠方からも通ってくる常連さんも多いのだろう。
(取材お断り、電話番号非掲載…ということだから、このくらいですんでいるのかしら)。

「菜」は今年で21年目。
ワンオペでお店を切り盛りし、ひとりで黙々と製麺から仕込みまでやっている店主に頭が下がる。
構わない印象のあるのはお店の内外観だけで、味には妥協のない、丁寧で誠実なラーメンだった。
私は、勝本をはじめ、元フレンチシェフの作るラーメンに弱い。「菜」が近所にあったなら、私毎週通うな、きっと。

菜(さい)
千葉県市川市南八幡2丁目4−17
公式インスタグラム

おいしいラーメンでお腹いっぱいになった後のシメに、先ほど「菜」を通り過ぎたとき、偶然見つけたお店に行くことにする。ここはカフェかな?

「かんぶつとコーヒーのお店 まるに商店」?

『まるに商店』は、2017年9月にかんぶつ食料品店がオープンさせた、カフェと手作り焼き菓子が楽しめるお店。

出汁昆布やふりかけのような「和かんぶつ」と、ドライフルーツやミックスナッツのような「洋かんぶつ」、そして、併設の『焼菓子工房まるに』で焼き上げたマドレーヌやクッキー、さらには、作家もののコーヒーカップまでが、違和感なく同居。

併設されたカフェスペースで、ナッツのケーキとマドレーヌをいただく。確かにナッツのクォリティが高い!(気がする)
友達の家に招かれて、手作りのお菓子でもてなしを受けているような居心地の良さ。

マドレーヌもバターやたまごの味が香り、しっとりとしてとても美味しい。
珈琲も酸味が苦手な私好みの、苦味と甘みのバランスのいい一杯でした。

テーブルのタイルがエキゾチック

今まで私の本八幡のイメージにはない、ニュータイプのお店。
「まるに商店」も、近所にあったらいいのにな。

「菜」で美味しいラーメンをいただき、ぶらぶら歩きで素敵なカフェも発見。
大変だった草刈りの、思わぬごほうびとなった、或る夏の昼下がりでした。

かんぶつとコーヒーのお店 まるに商店
千葉県市川市南八幡2丁目16−16 SKビル 101
047-321-6110
https://marunistore.official.ec